- 大阪・関西万博のチュニジアパビリオン「チュニジアの響き」を写真とともに解説。ジャスミンとモザイクを表現した外観、カルタゴ文明、砂漠の没入映像、科学・医療、水資源管理、伝統工芸などの見どころを紹介します。
- チュニジアパビリオンの基本情報
- チュニジアとはどんな国?
- 「チュニジアの響き」が表現するもの
- 外観|ジャスミンとモザイクが重なるファサード
- 館内へ|アラビア語で迎える「チュニジアへようこそ」
- وَجَعَلْنَا مِنَ الْمَاءِ كُلَّ شَيْءٍ حَيٍّ
- クルアーン第21章「預言者章」の一節
- 単語ごとの意味
- アラビア書道が読みにくい理由
- まとめ
- 展示①|カルタゴ文明から始まるチュニジアの歴史
- 展示②|砂漠とオアシスを歩く没入型映像
- 展示③|命を支える水・食・科学
- 展示④|チュニジアの伝統工芸を目の前で見る
- 色彩と香りで楽しむチュニジアのショップ
- 出口を包むジャスミンの回廊
- 日本とチュニジアをつないだ交流の機会
- 筆者が感じたチュニジア館の魅力
- まとめ|古代カルタゴから未来へ響くチュニジア
大阪・関西万博のチュニジアパビリオン「チュニジアの響き」を写真とともに解説。ジャスミンとモザイクを表現した外観、カルタゴ文明、砂漠の没入映像、科学・医療、水資源管理、伝統工芸などの見どころを紹介します。
大阪・関西万博の「いのちを救う」ゾーンで、ひときわ目を引く白い花に包まれたパビリオンがありました。それがチュニジアパビリオンです。

ファサードを華やかに飾るのは、チュニジアの国花であり暮らしに溶け込む「ジャスミン」。一歩館内へ入ると、古代カルタゴの歴史、どこまでも広がる砂漠とオアシス、現代の科学・医療、そして今も息づく伝統工芸へと、時代と地域を横断する豊かな旅が始まります。
単に展示を鑑賞するだけでなく、花の回廊や甘い香り、没入感のある映像、職人の手仕事実演を通して、チュニジアという国の魅力を五感で体感できる空間を詳しくレポートします。
チュニジアパビリオンの基本情報

- 国名:チュニジア共和国
- パビリオン名:チュニジアパビリオン
- コンセプト:チュニジアの響き/Resonance of Tunisia
- 参加テーマ:命を救うためのイノベーション・科学・技術におけるパートナーシップ
- 所在エリア:「いのちを救う」ゾーン
- 敷地面積:約300平方メートル
- 運営主体:チュニジア輸出振興センター(CEPEX)
チュニジアは、何千年もの間、地中海を介して多様な文化や文明が交差してきた「東西の生きた架け橋」です。古代カルタゴ文明から現代の革新的な試みまでが美しく「響き合う」というストーリーが、パビリオン全体の軸となっています。
チュニジアとはどんな国?
展示の理解をより深めるために、チュニジアの基本的な背景を簡単に整理しておきましょう。
- 位置:北アフリカの地中海沿岸に位置する
- 首都:チュニス
- 公用語:アラビア語
- 歴史:古代フェニキア人によって建てられたカルタゴが栄えた地
- 文化:地中海、イスラム、アラブ、アフリカの要素が融合した独特の文化
- 名産:高品質なオリーブオイル、伝統的な陶器、織物、モザイク装飾など
北アフリカの多様な文化が交差する地だからこそ、パビリオンには歴史・自然・工芸が美しく共存しています。
「チュニジアの響き」が表現するもの
パビリオンのテーマである「RESONANCE OF TUNISIA(チュニジアの響き)」には、次のような多様な要素が調和し、共鳴し合っているという意味が込められています。
- 古代文明と現代社会
- 東洋と西洋の文化
- 伝統的な手仕事と最新のイノベーション
- 繊細なジャスミンと力強いモザイクアート
- 過去から未来へ脈々と受け継がれる人々の営み
また、チュニジア館では展示の主要な柱として以下の3点を掲げています。
- 健康的な地域産品と食文化
- 水資源の管理と有効活用
- 科学・医療分野の進歩
これらを押さえておくことで、展示のメッセージがよりくっきりと見えてきます。
外観|ジャスミンとモザイクが重なるファサード

外壁を覆う無数の白い花は、チュニジアを象徴する「ジャスミン」です。
チュニジアにおいてジャスミンは純粋さと温かいホスピタリティ(おもてなし)を意味します。その背景に配されたモザイク模様は数千年に及ぶ重厚な歴史を物語り、ファサードの赤い基部はチュニジアと日本の両国旗に共通する「赤と白」を意図してデザインされたものです。
力強い赤のアクセントと、風に揺れるような繊細な白い花々。歴史の深さと歓迎の心が、一つのファサードに見事に表現されていました。
館内へ|アラビア語で迎える「チュニジアへようこそ」

アラビア書道に書かれた言葉の意味は?「水からあらゆる生き物を創った」
旅先やパビリオン、アラブ文化に関する展示を見ていると、美しいアラビア書道に出会うことがあります。
今回見つけた作品に書かれているのは、次のアラビア語です。
وَجَعَلْنَا مِنَ الْمَاءِ كُلَّ شَيْءٍ حَيٍّ
読み方の目安は、
ワ・ジャアルナー・ミナルマーイ・クッラ・シャイイン・ハイイ
です。
日本語では、
われらは、水からあらゆる生き物を創った。
という意味になります。
クルアーン第21章「預言者章」の一節
この言葉は、イスラームの聖典クルアーン(コーラン)の第21章「預言者章(アル=アンビヤー)」30節の一部です。
節全体では、天と地の創造について語られた後に、
「われらは水から、あらゆる生き物を創った」
と記されています。
人間だけでなく、動物や植物を含め、生命にとって水が欠かせない存在であることを思わせる言葉です。
単語ごとの意味
アラビア語を単語ごとに見ると、次のようになります。
- وَ(ワ):そして
- جَعَلْنَا(ジャアルナー):われらは造った、成した
- مِنَ الْمَاءِ(ミナルマーイ):水から
- كُلَّ شَيْءٍ(クッラ・シャイイン):あらゆるものを
- حَيٍّ(ハイイ):生きている、生命のある
直訳に近い形では、
「そして、われらは水から、あらゆる生命あるものを造った」
となります。
ここで使われている「われら」は、イスラームにおける複数の神々を意味するものではありません。アラビア語の宗教的・荘厳な表現として、唯一神アッラーが自らを「われら」と表現しています。
アラビア書道が読みにくい理由
最初に作品を見たとき、私は、
الماء من وجع كل شيء حي
のように書かれているのではないかと思いました。
しかし、正しくは、
وَجَعَلْنَا مِنَ الْمَاءِ كُلَّ شَيْءٍ حَيٍّ
です。
アラビア語は右から左へ読みますが、アラビア書道では文字を一直線に並べるとは限りません。文字を縦に伸ばしたり、複数の単語を重ねたり、文章全体を一つの図形のように構成したりします。
この作品でも文字が上下に重なっているため、通常のアラビア語に慣れていても、一目で文章を読み取るのは簡単ではありません。
アラビア書道は、文章を「読む」だけでなく、文字の形や配置を一つの芸術作品として「見る」文化でもあるのです。
まとめ
このアラビア書道に書かれているのは、クルアーン第21章30節の一部、
وَجَعَلْنَا مِنَ الْمَاءِ كُلَّ شَيْءٍ حَيٍّ
です。
意味は、
「われらは、水からあらゆる生き物を創った」。
生命と水の深いつながりを表す、美しく印象的な言葉でした。
アラビア書道は装飾性が高く、アラビア語を勉強していても簡単には読めないことがあります。しかし、文字を一つずつ確認し、その背景にある意味まで知ると、作品の見え方も大きく変わります。
文字自体が美しいアートとして完成されていますが、意味を読み解くと来場者をあたたかく迎える言葉であることが分かります。単なる装飾を超えた、現地の人々の温かいメッセージを受け取れる瞬間です。
展示①|カルタゴ文明から始まるチュニジアの歴史
展示の序盤では、古代カルタゴの建国者として知られる女王エリッサ(ディドー)や、ローマ軍を相手に知略を尽くして戦った天才将軍ハンニバルが紹介されています。
特にエリッサはカルタゴの建国者であると同時に、現在までチュニジアに受け継がれる「女性のリーダーシップ」を象徴する存在として位置づけられていました。
- 地中海世界を揺るがしたカルタゴの繁栄
- エリッサがもたらした建国伝説
- 名将ハンニバルの足跡
- 多種多様な文明が交差してきた歴史的背景
こうした歴史のストーリーが、現代チュニジア人のアイデンティティや誇りへとどのように繋がっているのかが、非常に分かりやすく整理されています。

展示②|砂漠とオアシスを歩く没入型映像

歴史のゾーンを抜けると、「The Echo」「The Path」「The Awakening」といった空間で構成された没入型の映像エリアへと入っていきます。
両側の壁面だけでなく床にまでチュニジアの砂漠やオアシスの風景が投影され、まるで本当に現地を歩いているかのような感覚に包まれます。静寂に包まれた夜空、波打つような砂丘、青々と茂るナツメヤシ。限られた展示スペースでありながら、チュニジアの広大な自然を全身で体感できました。
展示③|命を支える水・食・科学
チュニジア館は、ただ過去の歴史や自然を紹介するだけにとどまりません。今回の万博テーマに直結する「現代の技術とイノベーション」にもスポットを当てています。
水資源の管理と有効活用
国土に乾燥地域を抱えるチュニジアにとって、限られた水資源をどのように確保・管理し、持続可能に循環させていくかは生命線です。展示では、先人の知恵と現代の技術を組み合わせた水管理の取り組みが紹介されました。
健康的な地域産品と食文化
地中海の恵みを受けたオリーブオイルや伝統的な食材は、単なる食文化にとどまらず、人々の健康を維持し、地域経済を支える重要なイノベーションとして位置づけられています。
科学・医療分野の進歩
チュニジアの優れた研究機関、高度な医療技術、バイオテクノロジー、そして急成長するスタートアップ企業など、「未来への可能性」を感じさせる現代の側面も強くアピールされていました。

展示④|チュニジアの伝統工芸を目の前で見る

会場内では、ナブール地方の伝統陶器や、ケルアン・ガフサに伝わる手織物、繊細なガラス細工、香り高い香水瓶など、各地の手仕事品が展示されていました。
中でも印象的だったのは、職人が来場者の目の前で金属を使った工芸などの作業を披露していたことです。カンカンと響く音や手元の繊細な動きを間近で観察できるため、これらの工芸品が「過去の展示物」ではなく、現在も人々の暮らしの中で生きている技術であることがひしひしと伝わってきました。
色彩と香りで楽しむチュニジアのショップ


展示を抜けた先には、色鮮やかなチュニジアの雑貨や特産品が並ぶショップ&交流エリアが広がっています。
赤、青、緑、金色に彩られたグラスや美しい香水瓶、味わい深い陶器や伝統のお菓子、各種特産品などがズラリと並び、多くの人々で溢れかえっていました。歴史や科学を学んだ後に実際に手で触れられる商品を通して、チュニジアの洗練された美意識や日常の色彩感覚をより身近に感じることができます。
出口を包むジャスミンの回廊

パビリオンの最後に待っていたのは、天井一面から白いジャスミンの花が垂れ下がる幻想的な回廊でした。
古代カルタゴの歴史をたどり、砂漠の映像を渡り、科学技術や伝統工芸に触れた後、再びチュニジアを象徴する白い花の香りと空間に包まれて外の世界へと戻っていきます。「ジャスミンに始まり、ジャスミンに終わる」という一貫した演出が、素晴らしい余韻を残してくれました。
日本とチュニジアをつないだ交流の機会
万博期間中、チュニジア館は展示だけでなく様々な国際交流の場としても機能しました。
- ナショナルデー:2025年8月13日に盛大なナショナルデーイベントを開催。
- ウェルネス交流:6月には「温泉・ウェルネス」をテーマに、日本とチュニジアの健康文化を比較・共有する交流を実施。
- Tunisia OVOP Day:9月には、日本の「一村一品運動(OVOP)」をテーマにした国際プログラムが開催され、チュニジアの地域産品振興や女性職人の支援、持続可能な地域開発についての活発な議論が行われました。
日本発祥の地域活性化手法が、チュニジアの伝統工芸や地域開発と強く結びついている点は非常に興味深いトピックです。
筆者が感じたチュニジア館の魅力
チュニジア館で何より素晴らしかったのは、「五感すべてを使って国を感じられる構成」になっていた点です。
文字や説明パネルだけでなく、ジャスミンの清楚な白と香り、アラビア語カリグラフィーの曲線美、砂漠映像の没入感、職人が奏でる加工音、そして色鮮やかなガラス細工。視覚・聴覚・嗅覚・触覚のすべてを通してチュニジアの「空気感」を感じることができました。
歴史の重厚さと現代科学のスマートさ、そして何より現地の人々の温かさが調和した、非常に満足度の高いパビリオンでした。
まとめ|古代カルタゴから未来へ響くチュニジア
大阪・関西万博のチュニジアパビリオン「チュニジアの響き」は、古代カルタゴから続く深い歴史と、現代の科学・水資源管理・医療技術、そして今も大切に受け継がれる伝統手仕事を一つに繋いだ見事な空間でした。
入口でジャスミンに出迎えられ、歴史と砂漠、そして未来へのイノベーションを巡り、最後に再び花の回廊を通って旅を終える――。
「北アフリカの国」というシンプルな言葉だけでは表現しきれない、チュニジアという国の繊細さ、力強さ、そして温かなおもてなしの心を感じられる素晴らしい体験となりました。
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