大阪・関西万博で見えた「2030年リヤド万博」の本気|サウジアラビア館から読み解くVision 2030

大阪・関西万博

「大阪・関西万博で一番印象に残ったパビリオンはどこでしたか?」

そう聞かれたら、私は迷わず「サウジアラビア館」と答えます。

全184日間の会期を通じて、なんと300万人以上の来場者を魅了したサウジアラビア館。単なる「人気パビリオン」の枠を超え、世界に圧倒的なインパクトを残して幕を閉じました。

しかし、あの異例の熱狂は偶然ではありません。実はそこには、2030年リヤド万博へ向けた国家戦略「Vision 2030」の本気がぎっしりと詰まっていたのです。

今回は、大阪万博で働く中で何度もサウジアラビア館に足を運んだ筆者が、公式発表のデータや実績を交えながら、なぜこれほどまでに人を引きつけたのか、そしてその裏にある国家の未来像を紐解きます。

なぜ大阪万博のサウジアラビア館は爆発的人気だったのか?

サウジアラビア館のテーマは「An Epic Journey of New Discoveries(新たな発見の雄大な旅)」。多くの人々を虜にしたのには、大きく5つの明確な理由がありました。

1. 建築|伝統とモダンが融合した圧倒的な没入感

設計を手掛けたのは、世界的な建築設計事務所Foster + Partners(フォスター・アンド・パートナーズ)

サウジアラビア産の軽量石材を使用し、伝統的な街並みを再現した構造は、通り抜ける風が心地よい「路地空間」や開放的な「中庭」が見事に組み合わされていました。夜になれば美しくライトアップされ、どこを切り取っても映える空間としてSNSでも大バズり。

その優れた建築は世界的に高く評価され、BIE(博覧会国際事務局)公式アワードの建築&ランドスケープ部門で「金賞(Gold Award)」を受賞したほか、ニューヨーク建築賞など世界的な賞を総なめにしました。

2. 展示|五感すべてでストーリーを体感する

ただパネルや映像を「見る」だけの展示ではありません。

  • 歩く(サウジアラビアの街並みを再現した空間を感じる)
  • 聞く(心地よいBGMや環境音)
  • 香り(伝統的な香料の漂う空間)
  • 映像・音楽(評価の高い「Tales of Water」プロジェクションショーなど)

建築・映像・ライブパフォーマンスが完璧に一体となり、ゲスト自身が物語の主人公として旅をするような体験設計がなされていました。

3. 演出|会期中700回以上!毎日変わるイベントの熱量

ここがサウジアラビア館の最も凄まじいポイントです。行くたびに、ステージで行われているプログラムが異なりました。

会期中には700回以上の文化・ビジネスイベントが開催され、9月23日のサウジ・ナショナルデーには単日で7万人以上が来場!コンサートや映画上映、壮大なパレードで会場全体が揺れ動きました。

さらに開幕前には、日本の7都市を巡るプロモーション「Saudi Tours Japan(Meet Saudiキャンペーン)」を実施するなど、綿密な仕込みも行われていたのです。

4. 連携|150回以上の国際会議とビジネス展開

パビリオン内の「Collaboration Hub(コラボレーション・ハブ)」では、会期中に150回以上の二国間会談が開催されました。また「Saudi Vision 2030 Forum」などを通じ、文化紹介だけでなくビジネス・投資・国際交流の場として万博を最大限に活用していました。

5. グルメ&文化|大行列を作ったレストランとスーク

パビリオンに併設された「Irth Restaurant(イルス・レストラン)」「Saudi Souk(サウジ・スーク)」は連日大行列。

  • スパイスと肉の旨味が詰まった伝統米料理「カブサ」
  • カルダモンが香る爽やかな「サウジコーヒー」と甘い「デーツ」

「食」や「伝統工芸」という誰もが楽しめる入口から文化に触れてもらう手法は大成功を収め、日本人来場者の心をしっかりと掴んでいました。

【実績分析】サウジアラビア館が打ち立てた驚異の記録

CNNの「訪れるべきパビリオン Top 10」にも選ばれたサウジアラビア館。数字と実績で見ても、万博史に残る成功であったことが分かります。

項目実績・データ
総来場者数300万人以上(全184日間)
イベント開催数文化・ビジネスイベント700回以上
ビジネス会談コラボレーションハブで150回以上
最大単日来場数ナショナルデーに7万人以上
主な受賞歴・BIE公式アワード「建築&ランドスケープデザイン 金賞」
・ニューヨーク建築賞「文化建築部門 金賞」
・World Expolympics「最優秀大型パビリオン金賞」
・「Tales of Water」プロジェクションショー 銀賞
・KAUSTサンゴ礁プロジェクト「Expoイノベーションアワード」

これらが完璧に噛み合った結果、世界中から「万博の成功モデル」として絶賛されました。

実はすべて「Vision 2030」に向けた伏線だった

ここからが、この記事で一番お伝えしたい本質です。

サウジアラビア館のエンタメ性の高さや圧巻の展示は、単なる「おもてなし」ではありません。すべてはサウジアラビアが国を挙げて進める超大型国家戦略「Vision 2030」と直結していました。

Vision 2030とは?

一言で言えば、「石油依存からの脱却と、多様で持続可能な国づくり」を目指す改革構想です。

展示の中には、文化や歴史だけでなく、以下のような次世代プロジェクトが提示されていました。

  • 未来型超巨大都市「NEOM(ネオム)」
  • 紅海リゾート「Red Sea」&エンタメ都市「Qiddiya(キディヤ)」
  • 最先端テクノロジー・再生可能エネルギー・宇宙開発
  • KAUST(キング・アブドゥッラー科学技術大学)による3Dサンゴ礁再生プロジェクト

パビリオンは「文化紹介の場」であると同時に、世界中の企業や人材に向けた「未来への投資紹介プレゼンテーション」でもあったのです。

大阪から、舞台は「2030年リヤド万博」へ

閉幕式において、BIE(博覧会国際事務局)の旗がサウジアラビアへと正式に手渡されました。

大阪・関西万博でのサウジアラビア館の躍進はゴールではなく、2030年リヤド万博へ向けた「最強の予告編」だったのです。

駐日サウジアラビア大使のガーズィー・ビンザグル氏は、パビリオンについて「世界と共有した変革とイノベーション、文化交流の物語」と語り、リヤドを「イノベーションと文化のグローバル都市」にすると宣言しました。

2030年 リヤド万博(Expo 2030 Riyadh)概要

  • テーマ: Foresight for Tomorrow(明日のための先見性)
  • 開催期間: 2030年10月〜2031年3月
  • 開催地: サウジアラビア・首都リヤド
  • 参加予定: 195以上の国・地域、29の国際機関

大阪で提示された未来像が、2030年にはさらに巨大なスケールで現実のものとなり、世界中を迎えることになります。

まとめ:あのワクワクの続きを、2030年の現地で

大阪・関西万博のサウジアラビア館は、単なる人気のパビリオンではありませんでした。そこにあったのは、圧倒的な熱量で「未来を見せる力」そのものでした。

私は今回、大阪万博の現場で働き、何度もサウジ館の熱気に触れました。そして心からこう思いました。

「2030年は、今度はリヤド万博の運営側として、あの場所に立ちたい」

2030年、万博の舞台は大阪からサウジアラビアの首都・リヤドへと引き継がれます。

あのパビリオンで感じた圧倒的なワクワク感と未来への希望。それがどんな壮大な現実となって世界を驚かせるのか——今から楽しみでなりません。

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