【横浜園芸博】イタリア館の外観パース公開|「麦の建築」と大阪万博の屋上庭園が横浜へ

横浜園芸博

2027年3月に開幕するGREEN×EXPO 2027(横浜園芸博)で、注目を集めそうな海外パビリオンのひとつがイタリア館です。

2026年8月19日、イタリア大使館貿易促進部(ITA・イタリア貿易振興機構 東京事務所)が、GREEN×EXPO 2027イタリア館の建設に関するマーケット・コンサルテーション公告を公開しました。

その添付資料「Project Report」には、これまで詳しく明らかになっていなかったイタリア館の外観イメージや建築コンセプト、配置計画、内部構成などが掲載されています。 (イタリア大使館貿易促進部)

そして今回のイタリア館を見ていくと、単なる新しいパビリオンではありません。

2025年大阪・関西万博のイタリア館で使われた屋上庭園を横浜で再利用・再構成する計画も明記されています。

大阪から横浜へ。

イタリア館は、二つの博覧会を「庭」でつなぐパビリオンになりそうです。

※この記事は2026年8月26日時点で公表されている資料をもとにまとめています。設計や展示内容などは今後変更される可能性があります。

イタリアはGREEN×EXPO 2027への公式参加契約を締結

イタリアとGREEN×EXPO 2027は、2026年7月9日に駐日イタリア大使館で公式参加契約を締結しました。

GREEN×EXPO協会が発表したイタリアの出展テーマは、

「自然・伝統・革新の調和を設計するイタリア」

です。

公式発表では、大阪・関西万博イタリア館で使用された建築・展示要素の一部を横浜でも取り入れ、資源を再利用することで、循環経済や持続可能性への取り組みを示す方針も明らかにされていました。 (国際園芸博覧会)

そして約1か月後の8月19日、その具体的な姿が建設事業者向けの資料から見えてきました。

横浜園芸博イタリア館のパースが公開

イタリア大使館貿易促進部が公開したProject Reportによると、イタリア館の敷地面積は約660㎡

会場内では「6A」とされる区画に配置され、Farm & Food VillageやUrban GX Villageに近い国際出展エリアに計画されています。 (イタリア大使館貿易促進部)

今回公開されたイタリア館は、一般的な四角い建物とはかなり異なる外観です。

中央にGREEN×EXPO 2027で使用されるモジュール型施設「GX House」を置き、その周囲を楕円形の第二の外皮(second skin)で包み込む構成になっています。 (イタリア大使館貿易促進部)

その姿は、どこか巨大な「干し草の山」のようにも見えます。

実際、今回の建築はイタリアの農村のhaystack(干し草の山)を現代的に再解釈したものです。

実は、それこそが今回の建築コンセプトです。

イタリア館 外観イメージパース
引用:イタリア大使館貿易促進部(ITA Tokyo)「Italy Pavilion – Project Report」p.8(2026年8月公開)

コンセプトは「ARCHITECTURE OF WHEAT(麦の建築)」

Project Reportに記された建築コンセプトは、

ARCHITECTURE OF WHEAT

麦の建築

です。

イタリアの農村に古くから存在する「干し草の山」を現代的に再解釈し、木材や自然素材を使った建築として表現しようとしています。

資料では、収穫したものを集め、保管し、守るために生まれたイタリア農村の干し草の山を、ひとつの建築的な形へと昇華する考え方が示されています。

そして「麦」は単にイタリアの農村風景を象徴するだけではありません。

資料には、麦について研究と革新の歴史を通じてイタリアと日本を結びつける共有の遺産という考え方も示されています。 (イタリア大使館貿易促進部)

ここには、日本とイタリアの意外な歴史があります。

日本の「赤小麦」とイタリアをつなぐ物語

イタリア館の内部計画を見ると、一般展示やカンファレンススペースなどに加えて、

「Nazareno Strampelli(ナザレーノ・ストランペッリ)に捧げる展示エリア」

が設けられる予定であることが分かります。 (イタリア大使館貿易促進部)

ストランペッリは、20世紀初頭に活躍したイタリアの植物育種家です。

彼は1913年、日本の小麦品種「赤小麦(Akakomugi)」をヨーロッパの小麦と交配しました。

赤小麦が持っていた「背が低い」「早く成熟する」といった性質は、その後のイタリアの小麦育種に大きな影響を与え、ArditoやMentanaなどの品種につながっていきました。 (J-STAGE)

つまり今回の「麦の建築」は、単に農業や自然をイメージしたデザインというだけではありません。

日本の小麦とイタリアの農業研究が100年以上前からつながっていた歴史そのものを、建築や展示に落とし込もうとしている

と見ることができます。

横浜園芸博という「花・緑・農・食」を扱う博覧会だからこそ、非常に興味深いテーマです。

大阪万博イタリア館の「屋上庭園」が横浜へ

今回のProject Reportでもうひとつ注目したいのが、庭園です。

資料には、

大阪・関西万博のイタリア館に造られた屋上庭園を再利用し、横浜に合わせて再構成する

という計画が明記されています。

しかも、単なる資材の再利用ではなく、その「reuse(再利用)」自体を意図的なデザイン上の選択として位置づけています。 (イタリア大使館貿易促進部)

これは、2026年7月の公式参加契約発表で示されていた「大阪万博の建築・展示要素に新たな命を吹き込む」という方針が、より具体的になったものと言えます。 (国際園芸博覧会)

大阪の屋上庭園を歩いて感じたこと

私自身、大阪・関西万博のイタリア館を訪れ、屋上庭園を歩きました。

そこで印象的だったのが、庭園の向こう側に見える大屋根リングの緑です。

イタリア館の庭園の植栽越しに大屋根リングを見ると、リング上の緑とイタリア館の庭がそのまま続いているように見えました。

これはあくまで私自身が現地で感じた解釈ですが、イタリア館の庭だけで空間が完結しているのではなく、

イタリア館の庭 → 大屋根リングの緑 → 万博会場

へと風景が連続していくように感じました。

大阪・関西万博 イタリア館屋上庭園から大屋根リングを望む(筆者撮影)

大阪では、パビリオンと万博会場をつないでいるように見えた庭。

その庭が今度は、GREEN×EXPO 2027の舞台となる横浜へ受け継がれます。

そう考えると、横浜のイタリア館ではこの庭が、

大阪万博と横浜園芸博という「二つの博覧会をつなぐ庭」

になるようにも感じます。

もちろんこれは筆者の解釈ですが、今回の公式資料で大阪の屋上庭園の再利用が明記されたことで、個人的にも非常に楽しみなポイントになりました。

建築そのものにも「再利用」が組み込まれている

サステナビリティへの考え方は庭園だけではありません。

イタリア館を取り囲むファサードは、同じ形をした三角形の構造モジュールを組み合わせて構成される計画です。

約6mの木材を使用した構造を基本とし、製作や組み立てだけでなく、会期後の解体まで考慮されています。

さらに建物は恒久的な基礎ではなく、プレキャスト基礎を使用することで、敷地への影響を小さくする計画です。 (イタリア大使館貿易促進部)

大阪万博のレガシーを再利用するだけではなく、

横浜で新しく造るものについても、その後を考えて設計する。

「循環」を建築そのものによって示すパビリオンになりそうです。

内部には展示、ラウンジ、庭園などを計画

公開された平面計画によると、中央には来場者が通る展示空間が配置され、一方向で見学していく動線が想定されています。

その周囲には、

  • 展示・カンファレンスエリア
  • ラウンジ
  • 内部庭園
  • オフィス
  • VIP用入口
  • ナザレーノ・ストランペッリ展示
  • 水素発生装置
  • 美術作品の展示スペース

などが計画されています。 (イタリア大使館貿易促進部)

屋外にも植物や花を配置し、飲食エリアやステージなどを含むランドスケープが検討されています。 (イタリア大使館貿易促進部)

園芸博らしく、建物だけを見るパビリオンではなく、建築と植物、庭園、展示を一体として体験する空間になりそうです。

工事費は約3億6,900万円を想定

今回のパースが公開された背景には、イタリア館の施工事業者を選定するためのマーケット・コンサルテーションがあります。

対象となるのは、

  • 特注ファサード
  • 付帯工事
  • 内装・展示工事
  • MEP設備工事
  • 外構工事

など。

想定契約金額は、

200万ユーロ

=3億6,918万円(消費税・諸税別)

とされています。

参加意思表明の期限は**2026年9月6日23時59分(日本時間)**です。 (イタリア大使館貿易促進部)

今回公開された資料は、こうした施工に向けた段階のものなので、完成時の姿が今回のパースから変更される可能性もあります。

大阪から横浜へ。「レガシー」が目に見えるイタリア館に

大阪・関西万博のイタリア館は、美術、文化、建築、食などを通じて多くの来場者を集めました。

そのすべてを横浜でもう一度再現するわけではありません。

今回見えてきた横浜園芸博のイタリア館は、

麦という日本とイタリアをつなぐ農業の歴史

大阪万博から受け継がれる屋上庭園

再利用・解体まで考えた建築

という形で、大阪の経験をGREEN×EXPO 2027のテーマに合わせて再編集しようとしているように見えます。

大阪万博の屋上庭園から大屋根リングを眺めたとき、私は「この庭は会場の風景につながっている」と感じました。

その庭が今度は横浜へ移り、新しい風景の一部になります。

大阪では会場とつながっていたように見えた庭が、今度は大阪と横浜という二つの博覧会をつないでいく。

そんな見方をすると、GREEN×EXPO 2027のイタリア館はさらに面白くなりそうです。

2027年春、横浜でこの「麦の建築」と大阪から受け継がれた庭がどのような姿になるのか。

今後発表される展示内容や施工状況についても、引き続き注目していきたいと思います。

GREEN×EXPO 2027 開催概要

名称:2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)

開催地:神奈川県横浜市瀬谷区・旭区(旧上瀬谷通信施設)

開催期間:2027年3月19日~9月26日

テーマ:幸せを創る明日の風景 ~Scenery of the Future for Happiness~ (国際園芸博覧会)

参考情報

  • 公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会「イタリアとGREEN×EXPO 2027が公式参加契約を調印」(2026年7月13日) (国際園芸博覧会)
  • イタリア大使館貿易促進部「Market Consultation Notice and Call for Expressions of Interest」(2026年8月19日) (イタリア大使館貿易促進部)
  • Italy Pavilion「Project Report」 (イタリア大使館貿易促進部)
  • Borojevic & Borojevic, The transfer and history of “reduced height genes” (Rht) in wheat from Japan to Europe, Breeding Science, 2005 (J-STAGE)

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