2027年5月15日から8月15日まで、セルビアの首都ベオグラードで開催されるExpo 2027 Belgrade(ベオグラード万博)。
テーマは、
「Play for Humanity – Sport and Music for All」
(人類のための遊び―スポーツと音楽をすべての人へ)
です。
各国パビリオンのコンセプトが少しずつ明らかになるなか、2026年8月、オーストリア政府はベオグラード万博におけるオーストリア館の正式コンセプトを発表しました。
タイトルは、
「Join the Flow」
です。
今回のオーストリア館で物語の中心となるのは、音楽でもアルプスでもありません。
ドナウ川(Danube)です。
オーストリアを流れ、セルビア・ベオグラードへとつながるドナウ川を、
- 人
- 文化
- 知識
- アイデア
- 経済
- イノベーション
- 国際協力
を結ぶ「Flow=流れ」として、展示全体へ展開します。(経済省)
しかも、展示づくりを中心となって手掛けるのは、大阪・関西万博2025のオーストリア館でも展示を担当したfacts and fictionです。(Facts and Fiction)
大阪では「音楽」を入口に未来を描いたオーストリアが、ベオグラードでは「ドナウ川」を使って地域と未来のつながりを描く。
2つのExpoを続けて見ると、この変化がかなり面白く見えてきます。
▶ 関連記事:【公式マップ公開】ベオグラード万博2027の会場はどうなる?マスタープラン・テーマ館・パビリオン構成を解説
- オーストリア館のテーマは「Join the Flow」
- なぜオーストリア館の主役が「ドナウ川」なのか
- 公式パースも公開|「流れ」が建築とグラフィックへ
- 独立館を一から建てるのではなく「Hall III」をオーストリア館へ仕上げる
- 約950㎡・2階建て|オーストリア館の規模
- 館内には「デジタルのドナウ川」
- パビリオンの中心「Innovation Lab / The Lab」
- このInnovation Lab、大阪2025から続いている
- 大阪2025では「Composing the Future」
- 大阪2025オーストリア館はBIE展示デザイン銅賞
- 大阪では「音楽」、ベオグラードでは「川」
- オーストリアとセルビアは経済的にも近い
- 「Flow2Expo」で万博前後までビジネスをつなぐ
- オーストリアと万博の歴史は1851年から
- オーストリアは「国の特徴」を体験へ変えるのが上手い
- 大阪2025からベオグラード2027へ
- 情報について
- 参考・公式情報
オーストリア館のテーマは「Join the Flow」
オーストリア連邦経済・エネルギー・観光省(BMWET)は2026年8月4日、EU全域を対象とした2段階の選考を経て、Expo 2027 Belgradeのオーストリア館として、
「Join the Flow」
を採用したと発表しました。
コンセプトを手掛けるのは、
facts and fiction
+ ZONE Media
+ PLANET architects
のチームです。(経済省)
オーストリア館には、もう一つ重要な言葉があります。
「Österreich schafft Spielraum」
です。
「オーストリアは遊ぶ空間をつくる」という意味だけでなく、「新しい行動や発想の余地をつくる」というニュアンスも持たせた言葉遊びになっています。
facts and fictionは、この考え方をExpo 2027の「Play」というテーマと結び付け、空間そのものを「Spielraum=遊び・発想・可能性の余白」として体験できる展示へ変換します。(Facts and Fiction)
なぜオーストリア館の主役が「ドナウ川」なのか
今回のストーリーの出発点となるのが、ドナウ川です。
ドナウ川はオーストリアを流れ、セルビアを通り、さらに黒海へと向かいます。
つまり、ウィーンとベオグラードは同じ川によってつながっています。
オーストリア館では、この地理的なつながりを単なる「川」として扱いません。
ドナウ川は、
人の流れ
知識の流れ
アイデアの流れ
企業・経済の流れ
協力関係の流れ
を象徴する存在として使われます。
facts and fictionは、ドナウ川について、オーストリアとセルビアを結ぶ共通の文化・経済圏を形成するとともに、人・知識・アイデア・協力の自由な流れを象徴すると説明しています。(Facts and Fiction)
つまり「Join the Flow」は、
川の流れに参加しよう
という意味でありながら、
国境を越えて、人やアイデアがつながる流れに加わろう
というメッセージでもあるわけです。
公式パースも公開|「流れ」が建築とグラフィックへ
オーストリア政府、Expo 2027 Belgrade、facts and fictionでは、すでにオーストリア館の完成イメージが公開されています。
公開されたパースでは、白を基調としたパビリオン空間に、
赤・青・水色などの流線的なグラフィック
が大きく使われ、「Austria」「JOIN THE FLOW」といった文字が配置されています。
リアルな川を建物の中へ再現するというより、水の流れや動きを抽象化し、建築・グラフィック・映像を一体化する方向性が見えてきます。
Expo 2027 Belgrade公式サイトにも、Expo Austria提供の完成イメージが掲載されています。(エキスポベルグラード2027)
独立館を一から建てるのではなく「Hall III」をオーストリア館へ仕上げる
ここは大阪・関西万博2025との違いを見るうえでも興味深い部分です。
大阪2025では、オーストリア館は独自の建築として建設されたSelf-Built Pavilionでした。
一方、ベオグラード2027では、現在建設されているHall IIIのシェル部分を受け取り、そこからオーストリア館として内装・展示・メディア演出などを仕上げていく計画です。
Expo AustriaのプロジェクトマネージャーであるAlf Netek氏は2026年8月、現地の建設状況について、
- Hall IIIはシェル部分がかなり完成している
- 2026年10月末にパビリオンの内装工事側へ引き渡す予定
- そこから建築、展示、メディア、演出、プログラムを組み合わせていく
と公開しています。(LinkedIn)
つまり、現時点で見えている建物そのものが「完成したオーストリア館」なのではありません。
Expo側の建築空間
+ オーストリア独自の内装
+ 展示
+ デジタルメディア
+ プログラム
によって、最終的なオーストリア館へ仕上がっていくことになります。
▶ 関連記事:【ベオグラード万博 EXPO2027】ドイツ館「Germany! Out of the Box.」|ハノーバー2000・大阪2025・EXPO2035構想へ
約950㎡・2階建て|オーストリア館の規模
パビリオンの規模についても、かなり具体的な情報が公開されています。
Expo AustriaのプロジェクトマネージャーAlf Netek氏が公開した計画では、オーストリア館は以下のような構成になる予定です。(LinkedIn)
| 項目 | 計画 |
|---|---|
| 建築面積 | 約660㎡ |
| 延床面積 | 約950㎡ |
| 階数 | 2階 |
| 展示+The Lab | 約420㎡ |
| VIP・イベントエリア | 約130㎡ |
| その他 | 飲食・バックヤード等 |
約950㎡の空間に、
- 展示
- 企業・研究紹介
- イベント
- VIP対応
- Hospitality
- 飲食
- ビジネス交流
などを組み込む計画です。
単純に来場者が展示を見て通り抜けるだけではなく、交流やイベント、ビジネスの拠点としての役割も大きいパビリオンになることが分かります。
※面積・構成は2026年9月1日時点の公開計画であり、今後変更される可能性があります。
館内には「デジタルのドナウ川」
今回の展示で特に面白いのが、館内をつなぐデジタルのドナウ川です。
facts and fictionは、
media-generated river visual
によって各展示エリアを接続すると説明しています。
来場者は、そのデジタルな「流れ」に沿って館内を進みながら、複数のインタラクティブなステーションを体験します。(Facts and Fiction)
そこで紹介されるオーストリアの姿は、
- Business
- Industry
- Innovation
- Culture
- Creativity
- Education
- Sustainability
- Quality of Life
など。
観光地や歴史、伝統文化を順番に紹介する国家パビリオンというより、
ドナウ川という一つの「Flow」の中に、現代オーストリアのさまざまな側面を配置する
構成です。
さらにAlf Netek氏の公開情報では、このデジタルの流れは来場者のインタラクションに反応する計画とされています。(LinkedIn)
つまり、映像の川を眺めるだけではありません。
来場者自身が「Flow」に参加する
ことが展示の重要なポイントになりそうです。
パビリオンの中心「Innovation Lab / The Lab」
オーストリア政府が「パビリオンの心臓部」と位置付けているのが、
Innovation Lab
です。(経済省)
facts and fictionでは、この柔軟な空間をInnoLabとして紹介しています。
ここではExpo会期を通して、
- 企業
- 産業
- 研究
- イノベーション
などの異なるプロジェクトを入れ替えながら紹介します。
さらに選ばれた日には、
Education Lab
Art Lab
Sustainability Lab
として使用することも想定されています。(Facts and Fiction)
オーストリア政府が具体的に挙げている分野は、
- Green Tech
- デジタル化
- エネルギー
- モビリティ
- 教育
などです。(経済省)
つまり、完成された一つの「オーストリア像」を展示するのではありません。
企業、大学、研究機関、クリエイターなどが入れ替わりながら、
現在進行形のオーストリアを見せ続ける
仕組みです。
このInnovation Lab、大阪2025から続いている
ここで大阪・関西万博2025を振り返ると、興味深い共通点があります。
大阪2025のオーストリア館にも、
Innovation Lab Austria
がありました。
WKO(オーストリア経済会議所)の2025年事業報告によると、Innovation Lab Austriaでは10分野・約90のプロジェクトが紹介されました。
また、Expo全体では200以上のオーストリア企業・スタートアップ・団体が国際的な発信の機会を活用したとされています。(WKO)
つまり、
Osaka 2025
Innovation Lab Austria
↓
Belgrade 2027
Innovation Lab / InnoLab / The Lab
という継続性があります。
パビリオン全体のストーリーは大きく変わっても、
Expoをオーストリアの企業・研究・イノベーションを世界へつなぐプラットフォームとして使う
という考え方は続いているわけです。
大阪2025では「Composing the Future」
大阪・関西万博2025のオーストリア館のテーマは、
「Austria – Composing the Future」
(未来を作曲する)
でした。
日本ではオーストリアといえば、
モーツァルト、ウィーン、クラシック音楽
といったイメージが非常に強い国です。
そこで大阪では、その日本側のイメージを入口として使いながら、
未来はDesignするだけではなく、Compose=作曲するもの
というストーリーへ発展させました。(Facts and Fiction)
外観の象徴になったのは、高さ約16mの巨大な木製の五線譜。
そこにはベートーヴェン「歓喜の歌」の冒頭部分が表現されていました。(Facts and Fiction)
音楽を単なる伝統文化紹介に使うのではなく、未来そのものを考えるメタファーへ変換したパビリオンでした。

大阪2025オーストリア館はBIE展示デザイン銅賞
その展示はBIEからも評価されています。
Expo 2025 OsakaのOfficial Participant Awardsでは、
Exhibition Design
Self-built Pavilion・1,500㎡未満
Bronze Award(銅賞)
を受賞しました。国際博覧会局 (BIE)
そして、その大阪2025の展示を担当したのが、今回のベオグラード2027でも中心となるfacts and fictionです。
同社は大阪2025で、
Germany
Austria
European Union
の3つの展示に関わっていました。(Facts and Fiction)
大阪2025ではオーストリア館の展示をfacts and fictionが担当し、ZONE Mediaも制作を支援。
そしてベオグラード2027でも、
facts and fiction
+ ZONE Media
+ PLANET architects
という体制でオーストリア館を制作します。(Facts and Fiction)
大阪で蓄積したExpoのノウハウが、そのまま次のベオグラードへつながっていることが分かります。
大阪では「音楽」、ベオグラードでは「川」
ここが今回、特に興味深いポイントです。
大阪2025では、
Austria = Music
という、日本の来場者にも理解しやすい入口を使いました。
一方、ベオグラード2027では、
Austria = Danube / Flow
へと入口を変えています。
この違いには、開催地との関係性が表れていると考えられます。
日本から見れば、オーストリアはヨーロッパの文化・音楽国家です。
そこで大阪では、
音楽
↓
文化
↓
イノベーション
↓
未来
というストーリーが有効でした。
一方、セルビアはオーストリアと同じドナウ川流域にあり、地理的にも経済的にも近い国です。
そこでベオグラードでは、
ドナウ川
↓
地域
↓
人
↓
経済
↓
企業・研究
↓
Innovation
という構成へ変わっています。
これはK-WayYesによる考察ですが、同じ国のパビリオンでも、「どこでExpoを開催するのか」によって国の見せ方を変えている点が非常に面白いところです。
オーストリアとセルビアは経済的にも近い
「Join the Flow」は、単なる美しい展示コンセプトではありません。
Expo Austriaによると、セルビアには、
800社以上のオーストリア企業
が進出しています。
さらにオーストリアはセルビアへの第3位の投資国で、2025年のセルビア向け輸出額は約12億ユーロとされています。(Expo Austria)
オーストリア政府はさらに、2029年までにセルビア市場で4億ユーロ超の追加輸出余地があるとしています。(経済省)
つまりオーストリアにとってExpo 2027 Belgradeは、
「自国を紹介する場所」
だけではありません。
西バルカン地域との経済関係をさらに深める場所
でもあります。
「Flow2Expo」で万博前後までビジネスをつなぐ
それを象徴するのが、
Flow2Expo
です。
WKOは、Expo会期中だけではなく、
Expo前
↓
Expo期間中
↓
Expo後
まで続くビジネス・ネットワーキングプラットフォームを展開します。
予定されているのは、
- 企業・経済ミッション
- 専門イベント
- ワークショップ
- Webinars
- Business Platform
- Networking
- 文化・教育イベント
などです。(経済省)
つまりオーストリアはExpo 2027を、93日間だけの国家PRイベントとしてではなく、
西バルカンと長期的につながる経済・文化プラットフォーム
として利用しようとしています。
▶ 関連記事:大阪・関西万博のレガシーはベオグラードへ、そしてリヤドへ|次の万博はどうつながる?
オーストリアと万博の歴史は1851年から
オーストリアとExpoの関係は非常に古く、BIEによると1851年のロンドン万博から参加実績があります。
そして1873年には、
Expo 1873 Vienna(ウィーン万博)
を自国開催しました。
さらにウィーンでは、1964年と1974年に国際園芸博も開催されています。(国際博覧会局 (BIE)
近年の主要な参加を並べると、オーストリア館の特徴がさらに見えてきます。
| Expo | オーストリア館 | BIE公式褒賞 |
|---|---|---|
| ミラノ2015 | breathe.austria | 展示デザイン 金賞 |
| ドバイ2020 | Austria Makes Sense | 建築・ランドスケープ 銀賞 |
| 大阪2025 | Composing the Future | 展示デザイン 銅賞 |
| ベオグラード2027 | Join the Flow | ― |
BIE公式記録でも、ミラノ2015の金賞、ドバイ2020の銀賞、大阪2025の銅賞を確認できます。(国際博覧会局 (BIE)
テーマを並べても興味深いです。
Milan 2015
Forest / Air
↓
Dubai 2020
Senses
↓
Osaka 2025
Music
↓
Belgrade 2027
Danube / Flow
同じオーストリア館でも、毎回まったく異なる入口から「オーストリアらしさ」を体験へ変換しています。
オーストリアは「国の特徴」を体験へ変えるのが上手い
ミラノ2015では、オーストリアの森と空気そのものをパビリオンへ。
ドバイ2020では、「Austria Makes Sense」として五感を使った体験へ。
大阪2025では、音楽を未来への参加型体験へ。
そしてベオグラード2027では、ドナウ川をデジタルな「Flow」へ変えます。(国際博覧会局 (BIE)
共通しているのは、
オーストリアについて説明する
のではなく、
オーストリアらしい何かを、来場者自身が体験できる仕組みに変える
ことです。
その意味でも、「Join the Flow」は過去のオーストリア館の流れを引き継いだExpoパビリオンといえそうです。
大阪2025からベオグラード2027へ
大阪では、
Composing the Future
として未来を「作曲」しました。
ベオグラードでは、
Join the Flow
として未来の「流れ」に参加します。
そして、その裏では大阪2025にも参加したfacts and fictionやZONE Mediaが再び制作に関わり、Innovation Labという考え方も引き継がれています。
パビリオンの見た目やストーリーは変わっても、
人を集める
↓
交流する
↓
企業・研究・文化をつなぐ
↓
新しい協力を生み出す
というExpoの使い方は一貫しています。
特に今回のベオグラード万博は、オーストリアにとって「遠い国で自国を紹介するExpo」ではありません。
同じドナウ川流域にあり、経済的にも深いつながりを持つ地域で開催されるExpoです。
だからこそ、
「Join the Flow」
というコンセプトには、大阪2025以上に開催地域との関係性が強く表れているように感じます。
大阪の「音楽」から、ベオグラードの「川」へ。
Expo 2027 Belgradeで実際の展示がどのように完成するのか、オーストリア館も今後かなり注目したいパビリオンの一つです。
K-WayYesでは今後も、公式情報や現地の建設状況、展示内容など新しい情報が公開され次第、随時更新していきます。
情報について
※本記事は2026年9月1日時点で公開されているオーストリア連邦経済・エネルギー・観光省(BMWET)、Expo Austria、Expo 2027 Belgrade、WKO、facts and fiction、BIEなどの公式・一次情報をもとに、AIを活用して独自に整理・構成したものです。
記事内には、公式発表から確認できる事実に加え、過去の万博との比較などK-WayYesによる独自の整理・考察を含みます。
パビリオンの設計、面積、展示内容、運営計画、工事スケジュール等は今後変更される可能性があります。
公開されているパース・CGは現時点での計画イメージです。
参考・公式情報
▶ wko.at



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