リヤドの次の万博はどこ?大阪・関西万博の受賞国と招致の歴史から「Expo 2035」を読み解く

大阪・関西万博

大阪・関西万博が閉幕し、次に控えるのは2027年のベオグラード国際博覧会、そして2030年のリヤド万博です。

しかし、万博を追い続けていると、そのさらに先が気になってきます。

2035年のWorld Expoは、いったいどこで開催されるのでしょうか。

現時点では、Expo 2035の正式な候補国が出そろっているわけではありません。

それでも、各国の動きを追っていくと興味深い候補が見えてきます。

ドイツ・ベルリン、アメリカ・マイアミ、韓国・釜山、そしてエジプトの新行政首都。

なかでも筆者が注目しているのが、ドイツです。

なぜならドイツは、近年の万博で驚くほど安定して高い評価を受け続けている国だからです。

この記事では、大阪・関西万博のパビリオン表彰から過去の万博の受賞歴、開催地の歴史、招致に敗れた都市、現在進むExpo 2035構想までをつなぎながら、

「リヤドの次の万博はどこになるのか」

を考えてみます。

※この記事は2026年8月26日時点で公表されている情報を基に、一部筆者の考察・予想を含んでいます。

大阪・関西万博の受賞結果を見ると「万博に強い国」が見えてくる

大阪・関西万博では、閉幕前日の2025年10月12日にBIE(博覧会国際事務局)によるOfficial Participant Awardsが発表されました。

審査対象となったのは、単純な「人気パビリオンランキング」ではありません。

自建館の建築・ランドスケープ、展示の見せ方を評価する展示デザイン、万博テーマをどのように解釈したかを見るテーマ展開、そしてサステナビリティなどです。国やパビリオンの規模ごとに審査され、45の金・銀・銅賞と4つのサステナビリティ賞が授与されました。 (国際博覧会事務局)

大型自建館を見るだけでも興味深い結果になっています。

建築・ランドスケープ

金賞:サウジアラビア
銀賞:スペイン
銅賞:UAE

展示デザイン

金賞:中国
銀賞:インドネシア
銅賞:カナダ

テーマ展開

金賞:イタリア
銀賞:ドイツ
銅賞:ベルギー

さらに大型自建館のサステナビリティ賞を受賞したのはドイツでした。 (国際博覧会事務局)

小型館やモジュール館まで広げると、バーレーン、ポーランド、ヨルダン、ウズベキスタンなども高く評価されています。

とくにヨルダン館はモジュール型パビリオンでテーマ展開金賞+サステナビリティ賞を獲得しています。 (国際博覧会事務局)

大阪万博を実際に見た人であれば、「豪華な建物=高評価」ではないことがよく分かる結果ではないでしょうか。

重要なのは、その国が万博全体のテーマを自国の歴史・産業・文化・未来像にどう落とし込んだかです。

そして、この視点で過去の万博まで遡ると、非常に興味深い国があります。

それがドイツです。

ドイツ館はなぜ万博でこんなに強いのか

大阪・関西万博のドイツ館「わ!ドイツ」は、循環型社会をテーマにしたパビリオンでした。

「Wa」という言葉に、

和=Harmony
輪=Circle
Wow=驚き

という複数の意味を持たせ、「Circulars」と呼ばれるキャラクターを使いながら複雑な循環型経済の考え方を来場者に伝えました。

BIEも、ドイツ館について建築・ランドスケープ・展示が一体となり、「Connecting Lives」というサブテーマを循環型経済を通して表現していると紹介しています。 (国際博覧会事務局)

その結果が、

テーマ展開:銀賞
サステナビリティ:受賞

でした。

しかし、本当に驚くのは過去の成績です。

BIEが公開しているドイツの万博参加履歴を見ると、次のようになっています。

万博ドイツ館の受賞
愛知2005コンテンツ部門 金賞
サラゴサ2008テーマ部門 金賞
上海2010テーマ展開 金賞
麗水2012テーマ展開 金賞
ミラノ2015テーマ展開 金賞
アスタナ2017テーマ展開 金賞
ドバイ2020テーマ解釈 金賞
大阪2025テーマ展開 銀賞+サステナビリティ賞

つまり、World ExpoとSpecialised Expoをまたぎながら、愛知2005からドバイ2020まで7大会連続でテーマ・コンテンツ系の金賞を獲得しているのです。 (国際博覧会事務局 (BIE))

これは偶然とは考えにくいでしょう。

ドイツは単に「面白い建物」を作るのではなく、

その万博が掲げたテーマを、自国の技術・社会課題・産業政策と結びつけて展示として翻訳する

ことに非常に長けている国だと考えられます。

上海では都市、アスタナではエネルギー、ドバイでは環境、大阪では循環型社会。

毎回、開催地のテーマとドイツが得意とする分野を重ねています。

万博という舞台そのものを熟知している国、と言ってもいいのかもしれません。

ドイツにとって万博は「参加するイベント」以上の存在

ドイツと万博の関係は非常に古く、BIEによれば1851年の第1回ロンドン万博から参加しています。

さらにドイツは、BIEを設立する1928年のパリ条約に署名した31カ国のひとつでもあります。 (国際博覧会事務局 (BIE))

そして開催経験もあります。

1957年 ベルリン
1965年 ミュンヘン
2000年 ハノーバー

などの国際博覧会を開催し、園芸博覧会も複数回開催しています。 (国際博覧会事務局 (BIE))

その中でも最も重要なのが、

Expo 2000 Hannover

でしょう。

ハノーバー2000は「成功した万博」だったのか

ドイツ初のWorld Expoとなったハノーバー2000。

テーマは、

「Humankind – Nature – Technology(人間・自然・技術)」

でした。

BIEによると、160haの会場に174の国・国際機関などが参加し、約1,810万人が訪れています。 (the-expo.org)

数字だけを見れば巨大イベントです。

しかし、当初の計画には大きな問題がありました。

ドイツ連邦議会の資料では、運営側は4,000万入場を前提として計画していたことが確認できます。 (Dserver Bundestag)

実際の来場は約1,810万人。

想定の半分以下でした。

ドイツ公共放送系の報道でも、最終的に約18 million visitorsとなり、約24億ドイツマルクの財務上の穴が残ったと振り返られています。 (tagesschau.de)

そのためハノーバー2000は、今でも財務面や来場者予測の失敗を語られることがあります。

しかし、ここで面白いのはその後です。

ドイツは万博から距離を置くどころか、

その後の国際博覧会で圧倒的な受賞歴を積み重ねていきました。

ハノーバー2000から5年後の愛知万博を皮切りに、テーマ表現で金賞を取り続けています。

言い換えれば、

「開催国として経験した難しさを、その後は参加国として磨き続けてきた25年間」

とも見ることができます。

そして今、Expo 2035 Berlinが動き始めている

こうした歴史を踏まえて見ると、現在のベルリンの動きは非常に興味深く見えます。

2026年6月、ベルリンとブランデンブルクはExpo 2035の共同招致について正式な検討・作業プロセスを開始しました。

現段階ではドイツ連邦政府がBIEへ正式立候補を提出したわけではありません。

ベルリンとブランデンブルクが、会場、交通、インフラ、財源、経済効果などを検討し、2026年10月までに判断材料をまとめる段階です。 (Berliner Zeitung)

ベルリンの経済界も積極的です。

IHK Berlinが2026年5月に発表した調査では、回答者の65%がベルリンのExpo 2035招致を支持しました。期待されているものとして、インフラ整備、都市開発、雇用、イノベーションなどが挙げられています。 (IHK)

もちろん反対・慎重論もあります。

ブランデンブルク州首相Dietmar Woidkeは、万博が数十億ユーロ規模のプロジェクトになる可能性を指摘し、投資に見合った地域への利益が必要だとしています。 (DIE ZEIT)

ここはハノーバー2000の経験を持つドイツらしい議論とも言えます。

単純に「万博をやりたい」ではなく、

Expoを都市開発・交通・産業・イノベーションにどう残すのか。

そこまで成立させられるかが、ベルリン招致の鍵になるでしょう。

ドイツは2027年のベオグラード万博にも参加

2035年を考える上で、もうひとつ気になるのがベオグラード万博です。

ドイツはすでにExpo 2027 Belgradeへの正式参加を表明しています。 (エキスポ・ベオグラード 2027)

ベオグラード万博は2027年5月15日から8月15日まで開催されるSpecialised Expoで、現在140を超える国・国際機関などが参加を表明しています。 (エキスポ・ベオグラード 2027)

大阪2025でサステナビリティとテーマ表現を評価されたドイツが、

「Play for Humanity: Sport and Music for All」

という全く違うテーマをベオグラードでどう解釈するのか。

これは個人的にもかなり注目しています。

もしドイツが2035年招致を本格化させるのであれば、ベオグラード2027での参加もまた、「万博大国ドイツ」を世界に示す場所になるかもしれません。

ただし2035年の本命はドイツだけではない

ここまで読むとベルリンがかなり有力に見えます。

しかし、強力なライバルがすでに存在します。

アメリカです。

アメリカ・マイアミが2035年招致へ

2026年1月22日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、World Expo 2035への立候補意思を表明し、開催都市としてマイアミを支持しました。

さらに、マイアミ出身の国務長官Marco Rubioを招致活動の取りまとめ役にすると発表しています。Reutersも同日、この動きを報じています。 (ロイターコネクト)

これが実際に正式なBIE立候補へ進めば、非常に強力でしょう。

理由のひとつが「開催地域」です。

BIEが掲載するWorld Expo一覧を遡ると、北米で最後に開催されたWorld Expoは1967年のモントリオール万博です。 (国際博覧会事務局 (BIE))

2035年なら68年ぶり。

これは、

「久しぶりにWorld Expoを北米へ」

という分かりやすいストーリーになります。

アメリカは2026年FIFAワールドカップ、2028年ロサンゼルス五輪など大型国際イベントも相次いで開催します。

その先にWorld Expo 2035という構想を置くことには、一定の説得力があります。

韓国・釜山は2030年の敗戦から再挑戦するのか

もうひとつ見逃せない国が韓国です。

釜山はExpo 2030の開催を目指し、長期間にわたる大規模な誘致活動を行いました。

最終投票は、

リヤド:119票
釜山:29票
ローマ:17票

でした。

リヤドは1回目の投票だけで3分の2を超え、開催権を獲得しています。 (韓国政府公式サイト)

数字だけを見ると大差です。

しかし興味深いのは、その直後。

韓国政府公式サイトKorea.netは、釜山市がExpo 2035への再挑戦を検討すると報じました。 (韓国政府公式サイト)

韓国は1993年の大田、2012年の麗水でSpecialised Expoを開催しています。

しかしBIEも指摘しているように、World Expoの開催経験はまだありません。 (国際博覧会事務局)

ここに釜山の強い物語があります。

2030で失敗した都市が再挑戦し、

韓国初のWorld Expoを目指す。

実際、釜山の2030招致構想は2015年頃から長期間準備されていました。 (国際博覧会事務局)

一度の敗戦で蓄積された都市計画、国際ネットワーク、誘致ノウハウがすべて消えるわけではありません。

その意味で韓国は、2035でも十分注意する必要がある存在です。

ただし2026年8月時点では、ベルリンやマイアミほど具体的な最新の正式立候補プロセスは確認できていません。

ダークホースはエジプト?

そして個人的に非常に面白いと思っているのがエジプトです。

2022年、エジプトがNew Administrative Capital(新行政首都)でWorld Expo 2035の開催を検討していることが現地メディアで報じられました。 (EgyptToday)

その後、Expo 2035についてベルリンのような具体的な最新招致プロセスは、現時点では確認できていません。

したがって「正式候補」と扱うのは早いでしょう。

しかし、新行政首都そのものは着実に整備が進んでいます。

2026年3月にはカイロ方面と新行政首都を結ぶEast Nile Monorailが開業し、7月には国家戦略司令部「The Octagon」が新首都に開設されています。エジプト政府は新行政首都をスマートで持続可能な行政・文化・経済拠点として位置づけています。 (シスガバメント)

そして何より大きいのが、

もしエジプトが開催すれば、BIEのWorld Expoとしてアフリカ大陸初開催になる

という点です。

1851年からのWorld Expo開催地を見ると、欧州、北米、アジア、中東などへ広がってきましたが、アフリカ開催はまだありません。 (国際博覧会事務局 (BIE))

新しい首都そのものを世界に披露する万博。

これほど万博と相性の良い国家プロジェクトもなかなかありません。

だからこそ筆者は、現段階でエジプトを

「2035年のダークホース」

として見ています。

万博開催地に「地域の順番」はあるのか

ここで最近のWorld Expo開催地を並べてみます。

開催地地域
2000ハノーバー欧州
2005愛知東アジア
2010上海東アジア
2015ミラノ欧州
2020ドバイ中東・西アジア
2025大阪・関西東アジア
2030リヤド中東・西アジア
2035

BIEには、FIFAワールドカップの大陸ローテーションのように、

「次は欧州」「次は北米」

と決める明確な制度があるわけではありません。

World Expoの候補国は、開催予定日の6〜9年前に立候補でき、最初の候補が申請すると他国には6カ月間の立候補期間が設けられます。その後BIEによる実現可能性調査などを経て、加盟国が「一国一票」で開催国を選びます。 (国際博覧会事務局)

したがって、

「地域の順番だけで次の開催地を予想する」のは危険です。

しかし、投票する各国にとって、

「久しぶりの北米開催」
「韓国初のWorld Expo」
「アフリカ初開催」
「欧州へのWorld Expo回帰」

といったストーリーがまったく無意味とも考えにくいでしょう。

Expoは都市計画だけではなく、外交戦でもあります。

2030招致でも、サウジアラビア、韓国、イタリアが世界各国を巻き込んだ大規模な誘致活動を展開しました。

最終的にリヤドは119票という圧倒的な支持を集めています。 (韓国政府公式サイト)

では、2035年万博はどこになる?

ここからは筆者の予想です。

2026年8月26日時点では正式候補が確定していないため、あくまで現在分かっている動きと万博の歴史を踏まえた考察になります。

1位候補:ドイツ・ベルリン=ブランデンブルク

筆者は現時点では、ドイツを最も気になる候補として見ています。

理由は単純にベルリンが誘致を検討しているからだけではありません。

  • ハノーバー2000という開催経験
  • 1851年以来続く万博への関与
  • 愛知2005〜ドバイ2020まで7大会連続のテーマ・コンテンツ系金賞
  • 大阪2025でもテーマ銀賞+サステナビリティ賞
  • ベオグラード2027への正式参加
  • ベルリン・ブランデンブルクで始まった2035招致検討

これらがすべて一本につながって見えるからです。

ハノーバー2000から35年。

一度は来場者予測や財務面で苦い経験をした国が、その後35年間万博の展示を磨き続け、もう一度開催国になる。

もし実現すれば、非常にきれいなストーリーになります。

2位候補:アメリカ・マイアミ

一方、現時点で政治的な意思表明が最も明確なのはアメリカでしょう。

大統領自身が招致意思を表明し、国務長官を招致活動の取りまとめ役に指名しています。 (ロイターコネクト)

さらに北米でWorld Expoが長期間開催されていないという強みがあります。

正式立候補へ進めば、ベルリン最大のライバルになる可能性があります。

3位候補:韓国・釜山

2030招致で敗れたとはいえ、長期間積み重ねた準備と国際ネットワークがあります。

「韓国初のWorld Expo」という目標も残っています。

ただし、2026年時点で再挑戦がどこまで国家レベルで具体化するかを見極める必要があります。

ダークホース:エジプト・新行政首都

現時点では最も不確定要素が大きい候補です。

しかし、本格的に動き始めた場合、

アフリカ初のWorld Expo × 建設中の新首都

という他国にはない圧倒的なストーリーがあります。

だからこそ、今後の動向を追っておきたい国です。

私は「2035年ドイツ開催」を予想してみたい

もちろん、まだ候補国すら出そろっていません。

数年後にこの記事を読み返したら、まったく違う結果になっているかもしれません。

それでも、現時点でひとつ予想するなら、

Expo 2035 Berlin-Brandenburg

を挙げたいと思います。

その理由は「欧州の順番だから」ではありません。

むしろ、ドイツが長年万博という舞台で積み重ねてきたものにあります。

ハノーバー2000を開催。

その後、

愛知
サラゴサ
上海
麗水
ミラノ
アスタナ
ドバイ

とテーマ・コンテンツ系で金賞を積み重ね、

大阪ではテーマ展開銀賞とサステナビリティ賞。

そして次はベオグラードへ。

これほど継続的に「万博のテーマとは何か」を考え続けている国は、かなり興味深い存在です。

だからこそ、

参加する側として万博を熟知したドイツが、35年ぶりに開催する側へ戻る。

そんな未来があっても不思議ではないと思っています。

大阪からベオグラード、リヤド、そして2035へ

万博は一度閉幕すると終わるイベントのように見えます。

しかし実際に各国や制作会社、人材、展示、受賞歴、開催都市を追っていくと、次のExpoへと連続していることが分かります。

大阪・関西万博で評価された国が、ベオグラードでどんな展示を見せるのか。

ベオグラードで生まれた技術や人材が、2030年のリヤドへどうつながっていくのか。

そしてその頃には、2035年の開催地を巡る戦いも本格化しているはずです。

ベルリンなのか。

マイアミなのか。

2030年の雪辱を果たす釜山なのか。

それとも、エジプトがアフリカ初のWorld Expoを実現するのか。

各国パビリオンを見るとき、

「この国は今回何を展示しているのか」だけではなく、「この国は万博という舞台をどう使ってきたのか」

という視点を加えると、万博はさらに面白く見えてきます。

2035年にこの記事の予想が当たっているのか。

今から楽しみに追い続けたいと思います。

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