2023年に自国で「国際園芸博覧会」を大成功させた中東の国、カタール。
続く2025年の大阪・関西万博では、海とともに発展してきた豊かな歴史と未来を、印象的な建築と展示で表現しました。そして物語はこれで終わりではありません。緑と環境のバトンは、2027年に日本の横浜で開催される「GREEN×EXPO 2027(横浜国際園芸博覧会)」へと引き継がれます。
カタールは横浜博への参加をいち早く正式決定し、早くも注目のパビリオン構想を発表しました。
本記事では、「Expo 2023 Doha → 大阪・関西万博2025 → GREEN×EXPO 2027横浜」という3つの博覧会を軸に、カタールの歴史、国家戦略、建築美、そして持続可能な環境への取り組みを徹底解説します!
💡 この記事でわかること
- 砂漠の国カタールが「国際園芸博覧会」を開催した深い理由
- 隈研吾氏が掛け合わせた「ダウ船×日本の木工技術」の建築美
- 大阪・関西万博で明かされた「海と真珠」の歴史
- 2027年「GREEN×EXPO 2027横浜」カタール館の最新構想「The Flourishing Fareej」
第1章 Expo 2023 Doha――砂漠の国が開催した園芸博
物語の出発点は、アラビア湾に面した首都ドーハから始まります。
1-1. 中東初となる国際園芸博覧会の基本情報
| 項目 | 内容 |
| 開催地 | カタール・ドーハ(アル・ビッダ公園) |
| 開催期間 | 2023年10月2日〜2024年3月28日 |
| テーマ | Green Desert, Better Environment(緑の砂漠、より良い環境) |
1-2. なぜ「砂漠の国」カタールで園芸博だったのか?
一見すると「砂漠の国で植物?」と不思議に思えるかもしれません。しかし、極度の乾燥と水不足に直面しているカタールだからこそ、緑化は単なる「鑑賞」ではなく生存のための国家課題なのです。
- 砂漠化への対応と都市緑化
- 限られた水資源の効率的な活用(海水淡水化・循環利用)
- 持続可能な農業と食料安全保障(フードセキュリティー)
- 気候変動への適応
「厳しい環境下で、いかに緑を育てるか」。ドーハ園芸博は、地球規模の環境課題に対するカタールの強い意志表示でした。
第2章 Qatar National Vision 2030と国際イベント
カタールが立て続けに世界的なイベントを開催する裏には、国家の長期指針「Qatar National Vision 2030」が存在します。
2-1. カタールが目指す2030年の未来(4つの柱)
- 人的開発:教育や医療の充実、人材育成
- 社会開発:伝統文化の継承と国際貢献
- 経済開発:脱化石燃料、産業の多角化
- 環境開発:自然環境の保護と持続可能性
園芸博や万博への参加は、特に「環境開発」と「人的開発」に直結する一大プロジェクトです。
2-2. 2022 FIFAワールドカップから園芸博への繋がり
2022年、世界中を熱狂させた「FIFAワールドカップ カタール大会」。モダンな都市インフラを整えて世界を迎え入れたカタールは、そのわずか翌年、国際園芸博覧会を開幕させました。
スポーツによる熱狂から、次は「地球環境・都市の未来」へ。 カタールは発信テーマを世界規模の社会課題へと広げていったのです。
第3章 ドーハから大阪・関西万博へ
Expo 2023 Dohaで「環境と緑の未来」を力強く訴えたカタールは、2025年、大阪・関西万博の舞台へとやってきました。
しかし、大阪のカタール館で描かれたのは、園芸博とは一味違う「海」の物語でした。真珠採取、伝統の帆船、海上交易、そして沿岸都市から現代のハイテク都市へ――。ドーハから大阪へと渡されたバトンは、カタールのルーツを解き明かす展示へと姿を変えました。
第4章 大阪・関西万博のカタール館とは
4-1. 白い帆のように広がる美しいパビリオン
大阪・関西万博でも屈指の人気を誇ったカタール館。その建築概要は圧巻でした。
- 建築設計:隈研吾 氏
- デザインモチーフ:アラビアの伝統的な木造帆船「ダウ船」
- 技術の融合:日本の伝統的な木工技術(木組み)を採用
- デザイン特徴:風をはらむ白い膜屋根、水盤に映える白い外観、開かれた開放的なアプローチ

4-2. 実際に訪れて感じた第一印象
青空のもとに向かい合うと、真っ白な外観と木造構造の対比が鮮烈でした。まるで大海原に浮かぶ「帆」や「寄せ波」のよう。水盤に反射する光と木の温もりが融合し、遠くからでも一目で引き込まれる存在感がありました。館内へと続く開放的なアプローチには、連日多くの来場者が列を作っていたのが印象的です。
第5章 隈研吾氏が表現したカタールと日本
5-1. ダウ船と日本の木組みの融合
館内に足を踏み入れ見上げると、幾重にも複雑に組み合わされた美しい木構造が広がります。カタールの海洋文化を象徴する「ダウ船の船骨」と、日本が誇る「伝統の木工技術」。両国の文化が建築という言語を通じて完璧に結びついていました。

5-2. 【余談】万博会場にあった隈研吾氏の4つの建築

実は今回の万博会場には、隈研吾氏が手掛けた建築が4つ存在しました。
- カタール館(木×布×水)
- ポルトガル館(ファサードの素材美)
- マレーシア館
- EARTH MART(シグネチャーパビリオン)


それぞれのパビリオンで「自然素材をどう解釈し、建築に落とし込んでいるか」を比較して巡るのも、万博の大きな楽しみ方の一つでした。
第6章 海とともに歩んだカタールの歴史

6-1. 天然ガス発見以前のカタール
高層ビルが立ち並ぶ現在のイメージとは異なり、かつてのカタールは「海」とともに生きた人々の国でした。
- 真珠採取(パールダイビング)
- 沿岸部での漁業と海上交易
- 生活の足であり相棒だった「ダウ船」
石油や天然ガスが発見される以前、アラビア湾の美しい海と真珠こそがカタールの暮らしの資源だったのです。
6-2. 1824年の歴史地図が語るもの

館内に展示された1824年の海洋地図には、イギリス軍の海洋調査記録が色濃く残されていました。真珠が採れるポイント(パールベッド)やアラビア湾の緻密な水深データ。当時の人々がいかに危険と隣り合わせで海へ潜り、生計を立てていたかがリアルに伝わってきます。
6-3. カタール半島を囲む歴史的な町々

展示では首都ドーハだけでなく、半島各地に点在する歴史的な町も紹介されていました。
- アル・ワクラ / アル・ホール:古い港町・真珠採取の拠点
- ドゥハーン:カタールで初めて石油が発見された地
- メサイード / ウンム・バーブ / サルワ:産業や国境を支えた地域
カタールの歴史は、首都単体ではなく半島全体の沿岸コミュニティによって作られてきたことが分かります。
第7章 伝統から現代都市ドーハへ
7-1. 衣装と暮らしの展示

会場には、過酷な環境を生き抜く知恵と美意識が詰まった伝統品も並びました。
- 女性の伝統外衣(アバヤ)と色鮮やかな内側の衣装
- アラビアンコーヒーを振る舞うポット(ダッラ)とカップ
- 当時の海辺の暮らしを捉えたモノクロ写真
7-2. 海辺の小さな町から世界的な超近代都市へ


真珠と貿易の小さな港町は、天然ガスの採掘を経て、航空・観光・教育・スポーツ・国際会議を牽引するグローバル都市へと変貌を遂げました。
この驚異的な発展の足跡こそが、前述した「Qatar National Vision 2030」の基盤となっています。
第8章 大阪の展示から読み解くVision 2030
大阪・関西万博のカタール館は、ただ歴史を回顧するだけの展示ではありませんでした。「過去を知り、未来をどう創るか」という国家指針が明確に組み込まれていたのです。
| Vision 2030の4つの柱 | 大阪・関西万博カタール館での表現 |
| 人的開発 | 教育システム、人材育成、国際交流の推進 |
| 社会開発 | 伝統衣装や真珠文化など、独自のアイデンティティ継承 |
| 経済開発 | 都市開発の歴史と、脱石油に向けた産業の多角化 |
| 環境開発 | 海洋環境の保護、節水技術、ドーハ園芸博の知見 |
歴史と伝統をリスペクトしつつ、持続可能な未来へ進む――。カタールの力強い姿勢が凝縮された空間でした。
第9章 大阪からGREEN×EXPO 2027横浜へ
物語は、2025年大阪から、さらに先の未来へ続きます。
9-1. ドーハで始まっていた横浜へのバトン
実は、2023年の「Expo 2023 Doha」会場内には、すでに「GREEN×EXPO 2027横浜」をPRする特設コーナーが存在していました。つまり、国際園芸博覧会のバトンは、大阪万博より前の段階からカタール(ドーハ)から日本(横浜)へと手渡され始めていたのです。

9-2. 公式参加契約「第1号」となったカタール
カタールは、GREEN×EXPO 2027横浜への参加契約を世界で一番最初(第1号)に締結しました。前回の開催国が、次回の開催国を誰よりも早く、強力にバックアップする。このスピード感に、カタールの環境問題に対する本気度が表れています。
https://expo2027yokohama.or.jp/assets-wp/uploads/2025/05/press_20250514.pdf
第10章 横浜で発表されたカタール館の構想
10-1. 「The Flourishing Fareej」とは?
横浜園芸博におけるカタール館の採用テーマ・デザイン構想は「The Flourishing Fareej(繁栄するファリージュ)」です。
💡 Fareej(ファリージュ)とは?
カタールやアラビア湾岸地域における「伝統的な街区・近隣共同体」のこと。人々が集い、助け合い、日陰や風を通す空間工夫が施された地域社会の原点です。
10-2. パビリオンを構成する「4つの空間」
横浜のカタール館は、植物の成長過程になぞらえた4つのストーリー空間で構成されます。
- The Beginning(はじまり):生命と自然の起源
- The Roots(根):文化と伝統にしっかり根を張る
- The Growth(成長):テクノロジーと知恵による持続可能な発展
- The Bloom(開花):世界へひらかれる緑豊かな未来
この構成は、単に植物の成長を表すだけでなく、「真珠採取から始まり(Beginning)、海に根を張り(Roots)、都市として成長し(Growth)、国際社会へ開花した(Bloom)」カタールという国の歩みそのものとも言えます。
第11章 大阪と横浜、2つのカタール館を比較!
大阪と横浜。2つの博覧会でカタールが魅せる世界観を一覧で比較してみましょう。
| 比較項目 | 2025 大阪・関西万博 | GREEN×EXPO 2027 横浜 |
| メインモチーフ | ダウ船・大海原 | ファリージュ(共同体)・植物 |
| テーマの主軸 | 歴史・真珠・海上交易 | 自然・地域コミュニティ・緑 |
| 建築の特徴 | 白い膜屋根と木組み | 伝統街区とグリーンインフラ |
| 時間軸 | 過去から現在へ | 現在から持続可能な未来へ |
| メッセージ | 海による発展の歴史 | 緑による持続可能な未来 |
大阪で「自国のルーツ(海)」を力強く証明したからこそ、横浜では「自然と共生する未来(緑)」という新たなメッセージがより一層際立つのです。
第12章 まとめ|ドーハから大阪、そして横浜へ続くストーリー
2023年、乾燥の地ドーハで持続可能な緑のイノベーションを世界に提示したExpo 2023 Doha。
2025年、海とともに生きた人々の歴史と情熱を、美しい木組みのパビリオンで表現した大阪・関西万博。
そして2027年、国際園芸博覧会の舞台は日本の横浜へと移ります。前回開催国であるカタールは、「The Flourishing Fareej」という美しい構想とともに、再び私たちを驚かせてくれるはずです。
海から緑へ。過去から未来へ。
万博という壮大な物語を通じて、カタールが紡ぐ次の章を、今から楽しみに待ちましょう!

شكرا (シュクラン)
素晴らしい展示をありがとうございました。次は、2027年の横浜で会いましょう!
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