大阪・関西万博ヨルダンパビリオンの裏側|日本語が聞こえた理由と、日本・ヨルダンをつなぐ人たち

大阪・関西万博

はじめに

大阪・関西万博でひときわ異彩を放ち、多くの来場者を魅了したヨルダンパビリオン

実際に足を踏み入れ、まず驚かされたのは、現地スタッフの方々の自然で流暢な日本語でした。

「こんにちは!」

「足元にお気をつけくださいね。」

その温かい笑顔とスムーズな案内は、まるで日本人が接客してくれているかのような安心感がありました。「なぜ、これほどまでに日本語が上手なのだろう?」――そんな疑問を抱いた方も多いのではないでしょうか。

実はその背景には、日本とヨルダンが長年にわたり積み重ねてきた教育交流と、現地で育まれてきた「日本愛」がありました。

今回は、万博の現場で聞こえた日本語の理由と、両国を優しくつなぐ「人」のドラマに迫ります。

① パビリオンで驚きの声!ヨルダン人スタッフの日本語が上手な理由

館内アナウンスするヨルダン人スタッフの皆さん。その洗練された日本語の背景には、彼ら・彼女らが真摯に日本語と向き合ってきた努力の月日があります。

実際に会話をして見えてきたのは、単なる「万博のための接客用語」ではなく、日本文化や言葉そのものを愛し、深く学んできた人々が現場で活躍しているという事実でした。

では、なぜヨルダンでこれほどまでに日本語教育が根付いているのでしょうか?そこには、大学教育にとどまらない、幅広い層を支える2つの存在がありました。

② 子どもから大人まで!日本語学習の拠点「JAAJ」とは?

ヨルダンにおける日本語学習の裾野を広げているのが、JAAJ(JICA Alumni Association in Jordan / ヨルダンJICA帰国研修員同窓会)が運営する日本語講座です。JAAJは、日本(JICA)での研修を終えてヨルダンに帰国した元研修生たちが設立した同窓会組織です。その主要事業の1つとして、一般市民向けの「JAAJ日本語講座」を開講・運営しています。

そして、JAAJの最大の特徴は、大学などの専門機関に通う学生だけでなく、子どもから大人まで幅広い一般の方を対象とした日本語教室を開講している点にあります。

  • 子どもから大人まで学べる一般向け日本語講座の運営
  • 日本語で気軽に交流できる「会話クラブ」の開催
  • イベントを通じた日本文化の紹介
  • 世代を超えた日本語学習者コミュニティの形成

「日本が好き」「日本語を話してみたい」という思いを持った誰もが学べる場所があるからこそ、ヨルダンでは一般の市民の間にも日本語や日本文化への親しみと熱量が広がっているのです。

③ ヨルダン大学とJICA海外協力隊が紡ぐ「草の根の歴史」

さらに専門的な学びの場として歴史を紐解くと、ヨルダン最高峰の学府であるヨルダン大学の存在に行き当たります。

同大学では長年にわたり、JICA(国際協力機構)海外協力隊から日本語教師が派遣されてきました。「日本語教師として現地で教える」という要請が絶え間なく続いてきたことで、ヨルダンにおける高等教育としての日本語教育の基盤が強固なものとなりました。

JAAJのような一般向け教室と、ヨルダン大学のような専門教育。この両輪があったからこそ、何世代にもわたる草の根の交流が積み重ねられてきたのです。

④ 【現地エピソード】「〇〇先生のおかげで日本が大好きになった」

パビリオンを訪れた際、私も実際にヨルダン人スタッフの方とお話しする機会に恵まれました。

日本語での案内について尋ねてみると、スタッフの皆さんが笑顔で口を揃えて語ってくれたのは、現地で教わった日本語教師の方々への深い感謝と愛でした。

「〇〇先生に日本語を教えてもらったから、日本語が本当に大好きになったんです!」

恩師である先生との思い出や、日本語を学ぶ楽しさをキラキラとした目で語るスタッフの方々。先生から受け取った情熱と温かさが、そのまま「日本語が好き」という気持ちに繋がり、万博の現場での温かい接客へと花開いていました。

話が弾む中で共通点も次々と見つかり、最終的には連絡先を交換するほどの素敵な縁が生まれました。「日本語」という共通言語と恩師への思いが、国境を越えて一瞬で心を繋いでくれた瞬間でした。

⑤ 本物の砂漠を大阪へ!「ワディ・ラム」の砂に隠された裏話

ヨルダンパビリオン最大のハイライトといえば、神秘的な砂漠空間の再現です。

再現されているのは、ヨルダン南部に位置する世界遺産「ワディ・ラム」。映画『オデッセイ』や『スター・ウォーズ』、『デューン 砂の惑星』などのロケ地としても有名な、太古の自然が残る赤く美しい砂漠です。

実は関係者への取材によると、パビリオン建設当初は「本物の砂漠の砂を何百トンもヨルダンから大阪へ運ぶ」という壮大な計画があったそうです。

しかし、長距離輸送の壁や厳格な植物検疫などのハードルにより、最終的には厳選された数トン規模の砂を持ち込む形となりました。スケールダウンしたとはいえ、持ち込まれた本物の砂が作り出すグラデーションと空間演出は圧巻の一言。大阪にいながらにして、ワディ・ラムの息吹を肌で感じることができます。

「ワディ・ラム」砂漠から船便で日本へ運ばれ、不純物の除去や洗浄などの厳しい衛生・検疫基準をクリアした約22トンの赤い砂がパビリオン内に敷き詰められました。(一部の裏話・報道によると、現地からは約150トンもの砂を用意し、精製を経て最終的に22トンが会場に持ち込まれたとされています)

⑥ ヨルダン館が本当に伝えたかったこと

ヨルダンパビリオンの展示を巡っていくと、美しいストーリーラインが見えてきます。

雄大な砂漠→受け継がれる文化→温かい人びと→共に創る未来

砂漠という厳しい自然の中で育まれた文化、そしてそれを守り未来へつなぐ「人」。

「先生のおかげで日本語が好きになった」と流暢な言葉で迎えてくれたスタッフの姿そのものが、パビリオンのテーマである「人と人とのつながり」を力強く証明していました。日本とヨルダンの架け橋となっているのは、展示物以上に、そこで笑顔を届ける「人」なのです。

おわりに

万博の会場で本物の砂漠の砂に深く魅了され、スパイシーで香り高いアラブコーヒーや、優しい甘さのデーツシェイクといった絶品のアラブスイーツも堪能でき、五感全体でヨルダンを感じられる本当に素晴らしいパビリオンでした。

「こんにちは」というひとことの笑顔の裏には、日本語教室や大学で出会った先生たちとの温かい思い出と、両国が積み重ねてきた教育交流の歴史が刻まれています。

日本とヨルダンの架け橋となってくれたスタッフの皆さん、そしてこれから日本語を学んでいく次世代の活躍に心から期待するとともに、彼らとの温かい対話を通して、遠いようで近いヨルダンという国をもっと身近に感じてみてはいかがでしょうか。

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